大判例

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東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)241号 判決

原告の主張する審決取消事由の存否について検討する。

1 本願意匠の形態

成立に争いのない甲第二号証によれば、本願意匠は、平面形状が隅丸長方形をした浅い皿状で内部に多数の長短の縦リブ、横リブ及び横溝などを設けた構成を基本形状とし、上端周縁はやや張り出して僅かに外側へ折曲されて鍔状となり、その平面両端における縦幅・横幅の比率は約1対1.9で、横幅をほぼ六等分するように、上下端の内壁にかかる部分がL字状になつた五本の長縦リブが設けられ、その長縦リブ間の上下端内壁に各一本のL字状短縦リブが突設され、さらに、両端の長縦リブと左右の内壁との間に各二本ずつのL字状短横リブが突設されて各三個ずつの小皿様の凹室を形成し、各長縦リブ間には七本ずつの横溝が等間隔に設けられ、さらに、各L字状短縦リブの両側に各一本ずつの短縦溝が設けられているものであることが認められる。

原告は、本願意匠には、L字状短縦リブとその両側の短縦溝とによつて構成される「額縁部」と、上下をこの額縁部で囲まれた「中央底面」という構成単位があると主張するけれども、前掲甲第二号証によれば、そのL字状短縦リブと長縦リブのL字形の部分はすべて同形、同高であり、原告のいう額縁部と中央底面のそれぞれの底面は連続して同高のものとなつていることが認められるから、原告のように本願意匠に「額縁部」「中央底面」という独立した構成単位があるとするのは適切でなく、右の主張は採用できない。

2 先願意匠の形態

成立に争いのない甲第三号証によれば、先願意匠は、平面形状が隅丸長方形をした浅い皿状で内部に多数の長短の縦リブ、横リブ及び横溝などを設けた構成を基本形状とし、上端周縁はやや張り出して僅かに外側へ折曲されて鍔状となり、その平面両端における縦幅と横幅の比率は約1対2.0で、横幅をほぼ八等分するように、上下端の内壁にかかる部分がL字状になつた七本の長縦リブが設けられ、両端の長縦リブと左右の内壁との間に各二本ずつのL字状短横リブが突設されて各三個ずつの小皿様の凹室を形成し、各長縦リブ間には一〇本ずつの横溝が等間隔に設けられているものであることが認められる。

3 両意匠の類否

本願意匠と先願意匠とを比較すると、一見して、両者は、

(1) 平面形状が隅丸長方形の浅い皿状で、右皿状体の上縁周縁は外側に折曲されて鍔状となつている、

(2) 右皿状体の内部が多数のL字状長縦リブによつて区切られている、

(3) 両端の長縦リブと左右の内壁との間には、二本のL字状短横リブでほぼ三等分された各三個の小皿様の凹室が設けられている、

(4) 右長縦リブ相互の間は、それぞれ均等に分割されて細長い底体表面を形成し、その底体表面には多数の横溝が規則的に設けられている、

という各点の形態において共通していることが認識され、

この認識から、(イ)等間隔の各長縦リブのつぎに多数の横溝がくるという順序が繰返される共通のリズム感、(ロ)多数のリブや溝が縦と横だけの配列となつていて斜めの線が全くないという共通の安定感、を生じ、看る者に両意匠が類似の意匠であるとの印象を惹起させる。

もつとも、両意匠の間には、(1)長縦リブと横溝の本数が異なる(本願意匠では長縦リブが五本、横溝が七本ずつであるのに対し、先願意匠では七本と一〇本ずつ)、(2)本願意匠では長縦リブ相互の間に短縦リブとその両側の縦溝があるのに対し、先願意匠にはこれに相当するものが存在しないという点に差異が存するが、それにも拘らず、両意匠を全体として見れば、前記共通の形態に由来する類似の印象は支配的であつて、右の差異点は部分的な微差にすぎないものというべきである。

したがつて、本願意匠と先願意匠とが類似の意匠であるとした審決の判断に誤りはなく、原告の主張は、理由がない。

よつて、審決の取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本件における請求原因は左のとおりである。

一 特許庁における手続の経緯

原告は、意匠に係る物品を「包装用さら」とする別紙第一(〔編註〕省略)に示すとおりの意匠(以下「本願意匠」という。)につき、昭和四九年一一月二五日意匠登録出願をしたところ、昭和五四年二月一七日拒絶査定を受けたので、同年四月二八日審判を請求した。この請求は昭和五四年審判第四七〇四号事件として審理されたが、昭和五五年六月一九日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年七月一二日原告に送達された。

二 審決の理由の要点

1 本願意匠の要旨は、次のとおりである。

基本形状は、平面が隅丸長方形状をした浅い皿状で、内部に多数の長短の縦リブ、横リブ及び縦溝、横溝などを設けた構成である。

上端周縁はやや張り出して僅かに外側へ折曲されて鍔状となり、その平面上端における比率は縦1、横約1.9で、横幅をほぼ六等分するように、上下端の内壁にかかる部分がL字状になつた五本の長縦リブが設けられ、次に、その長縦リブ間のやはり上下端内壁に各一本の短L字縦リブが密設され、さらに、両端の長縦リブと左右の内壁との間に各二本ずつの短L字横リブが密設されている。

また、各長縦リブ間には多数本の横溝が等間隔に設けられ、さらに、各短L字縦リブの両側に各一本ずつの短縦溝が設けられている。

2 これに対し、昭和四七年七月二五日意匠登録出願がされた昭和四七年意匠登録願第三二八七二号意匠(以下「先願意匠」という。昭和五三年五月三〇日に拒絶査定があり、その後確定。)は、意匠に係る物品を「肉皿」とする別紙第二に示すとおりの包装用容器であり、その要旨は次のとおりである。

基本形状は、平面が隅丸長方形状をした浅い皿状で、内部に多数の長短の縦リブ、横リブ及び横溝などを設けた構成である。

上端周縁はやや張り出して僅かに外側へ折曲されて鍔状になり、その平面上端における比率は縦1、横幅約2.0で、横幅をほぼ八等分するように、上下端の内壁にかかる部分がL字状になつた七本の長縦リブが設けられ、さらに、両端の長縦リブと左右の内壁との間に各二本ずつの短L字横リブが密設されている。

また、各長縦リブ間には多数本の横溝が等間隔に設けられている。

3 そこで、両意匠を比較すると、両者は、まず、平面を隅丸長方形状をした浅い皿状とし、内部に多数の長短の縦リブ、横リブ及び横溝などをほぼ同じような配置で設けたという基本構成において酷似し、次に、上端周縁を外側へ折曲させて鍔状とした点、内壁にかかる上下端の部分をL字状にした長縦リブの形状、左右の内壁と両端の長縦リブとの間に密設された短L字横リブの形状、各長縦リブ間に設けられた多数本の横溝の形状などにも共通点が認められる。

これに対して、両者の間には、短L字縦リブ及び短縦溝の有無といつた相違が認められるが、これらはいずれも、上下端内壁附近に設けられたごく部分的なものであり、上記諸共通点によつて構成された両者の意匠的まとまりを破つて、看者に別異感を与える程に強いものとは認められない。

したがつて、両意匠は、これを全体的に観察した場合、互いに類似するものと認められるから、本願意匠は、意匠法第九条第一項の規定により、登録を受けることができない。

〔編註その二〕 本件に関する意匠は左のとおりである。

別紙第二

<省略>

<省略>

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